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東京地方裁判所 平成9年(ワ)2270号 判決 1999年3月16日

東京都足立区鹿浜五丁目二二番一号

リュバンドールビル一〇一号

原告

株式会社東洋コーポレーション

右代表者清算人

北見幸之助

右訴訟代理人弁護士

得居仁

品川政幸

大阪府枚方市養父丘一丁目七番一三号

被告

軽貨物運送協会こと

山﨑勝

大阪府門真市垣内町一二番三二号

被告

軽貨急配株式会社

右代表者代表取締役

西原克敏

右両名訴訟代理人弁護士

弘中徹

三好重臣

早坂亨

木村達也

浦川義輝

中紀人

片山文雄

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  原告の請求

被告らは、原告に対し、連帯して、金三五二二万〇八五六円及びこれに対する平成八年一二月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、原告が被告らに対し、被告らは平成八年一〇月ころ、競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、不正競争行為(不正競争防止法二条一項一一号)ないし業務妨害行為(不法行為)を行ったとして、不正競争防止法四条又は民法七〇九条、七一五条に基づき、損害賠償(不法行為の後の日からの遅延損害金の支払を含む。)を求めている事案である。

一  争いのない事実等

1  原告は、平成八年四月二六日に設立された株式会社であり、平成九年三月二四日に解散するまでの間、運送代理店業、貨物運送取扱業、自動車運送取扱業等を目的とし、関東及び東北地域において、顧客に車両を購入させて軽貨物運送業を行わせるなどの業務を行っていた。具体的には、河北新報社発行の「河北新報」等の新聞や折込広告などに「軽貨物運送業 独立開業者募集」、「開業資金ゼロにて開業OK」、「仕事は一〇〇%保証」、「現況売上例四〇万~六〇万円以上」などと記された広告を掲載して、顧客となる軽貨物運送業の独立開業希望者を集め、盛岡商工会議所、いわき市、北上市等の公的施設の会議室などを借り受けて説明会を開催したり、個人面接を行って、独立開業の方法や仕事の内容等の説明をした上、軽貨物運送業を開業しようとする顧客との間で、「貨物軽自動車運送開業指導養成契約」及び「運送情報仲介基本契約」を締結して、仲介手数料を取得し、また、運送事業用の車両の購入を希望する顧客に対しては、これを現金払又はローンを利用する方法により代金一七九万円で販売していた。(争いがない。)

2  原告は、顧客に販売する車両の基となる軽トラックを、株式会社スズキ自販東京(以下「スズキ自販東京」という。)や株式会社スズキ自販宮城(以下「スズキ自販宮城」という。)に発注していた。(争いがない。)

スズキ自販東京は、自ら行う車両販売の顧客に対して、国内信販株式会社、日本信販株式会社及び東京総合信用株式会社(以下、これらを「本件信販三社」という。)と提携したオートローンを利用させていたが、原告が車両を販売する顧客についても、本件各信販会社に対してスズキ自販東京特販部が当該車両の販売店であるという形式を採ることによって、右オートローンを利用させていた。(証人長谷川富彦の証言によって認められる。)

3  被告軽貨急配株式会社(以下「被告軽貨急配」という。)は、自動車運送取扱業、軽車輌等運送事業等を目的とする会社であり、顧客に車両を購入させて軽貨物運送業を行わせるなどの業務を行っている。(争いがない。)

被告軽貨物運送協会こと山﨑勝(以下「被告山崎」という。)は、平成六年ころから平成九年五月ころまでの間、被告軽貨急配の総務部長の職にあり、平成七年三月ころから平成九年五月ころまでの間、「軽貨物運送協会」の名称で活動していた者である。(乙第三九号証、被告山崎本人尋問の結果、弁論の全趣旨によって認められる。)

4  被告山崎は、平成八年一〇月ころ、軽貨物運送協会名義で、スズキ自販東京及びその販売車両の製造メーカーであるスズキ自動車株式会社(以下「スズキ自動車」という。)の各取締役に対し別紙一の文書を送付し、これによって、(1)原告が軽貨物運送業の独立開業希望者に対して、仕事先を紹介して高収入を上げさせる意思も能力もないのに、原告と契約を結べば原告から数多くの仕事の紹介を受けられ、高収入が得られる旨の虚偽の説明をした上、軽トラックを改造車と偽って市場価格よりも不当に高額な価格で販売したという事実、(2)原告が軽貨物運送業の独立開業希望者に対して販売した軽トラックの販売代金の一部について、スズキ自販東京からリベートバックを受けたという事実を、それぞれ告知した。(争いがない。)

また、被告山崎は、同月ころ、いずれも軽貨物運送協会名義で、本件信販三社に対し別紙二の文書を、河北新報社に対し別紙三の文書を、盛岡商工会議所、いわき市、北上市及び宮古商工会議所の公的施設(以下、これらを「本件公的施設」という。)の管理者に対し別紙四の文書をそれぞれ送付し、原告が軽貨物運送業の独立開業希望者に対して、仕事先を紹介して高収入を上げさせる意思も能力もないのに、原告と契約を結べば原告から数多くの仕事の紹介を受けられ、高収入が得られる旨の虚偽の説明をした上、軽トラックを市場価格よりも不当に高額な価格で販売したという事実を、告知した。(争いがない。)

二  争点

1  被告山崎が、原告に対して、不正競争行為ないし不法行為を理由とする損害賠償義務を負うか否か。

(原告の主張)

(一) 別紙一ないし四の文書の送付によって告知された事実は、以下に詳述するとおり、いずれも虚偽であり、被告山崎は、十分な根拠に基づくことなく、原告の業務を妨害し被告軽貨急配の利益保護を図る目的で、原告の営業活動を誹誘、中傷する虚偽の事実を告知したものである。

(1) 原告は、当時仙台地域で三〇社以上の紹介依頼先の運送会社を確保した上で、実際に仕事を紹介していた。原告が掲載した広告の「一〇〇%保証」という記載は、「運送情報仲介契約」に基づき、顧客に必ず仕事先として運送会社を一社は紹介することとしているという趣旨であって、その内容に何ら偽りはない。

また、原告は、事前の独立開業説明会においても、契約締結に際しても、原告による運送会社の紹介はあくまで仕事の依頼先を紹介するにすぎないものであり、顧客のその後の成功まで保証するものではないことを説明しており、よい仕事を数多く紹介するとか、高収入が得られるなどという説明はしていない。これは、「貨物軽自動車運送開業指導養成契約書」の第四条に、売上や事業の成功を保証するものではない旨が記載されていることからも裏付けられる。

(2) 原告が顧客に販売した車両は、実際に平ボディーに特装テントを取り付けて改造したものである。

被告らは、株式会社東洋開発(以下「東洋開発」という。)が後部座席を取り外しただけの自動車を一七九万円で顧客に販売していたことを根拠に、原告が実際に改造していない車両を改造車と偽って販売していた旨を主張するが、原告と東洋開発とは別個の会社であり、被告山崎は、東洋開発に関する事実をもって、原告に関する事実をねつ造したものにほかならない。

(3) 原告が、車両の販売代金の一部について、スズキ自販東京からリベートバックを受けたということは一切ない。

(二) 原告は、被告山崎の本件信販三社に対する別紙二の文書の送付によって、本件信販三社が原告の車両販売に係るローンの実行をすべて停止したため、顧客に対してローンを利用した車両の販売ができなくなり、業務に支障を来した。

また、原告は、被告山崎の本件公的施設の管理者に対する別紙四の文書の送付によって、本件公的施設の会議室などを借り受けることができなくなり、従来のように説明会を開催することができず、業務に支障を来した。

(三) 被告山崎の別紙一ないし四の文書を送付した行為は、不正競争行為(不正競争防止法二条一項一一号)ないし違法な業務妨害行為(不法行為)に該当する。

よって、被告山崎は、原告に対し、不正競争防止法四条又は民法七〇九条に基づき、原告に生じた損害を賠償する義務を負う。

(被告山崎の主張)

(一) 別紙一ないし四の文書の送付によって告知された事実は、以下に詳述するとおり、いずれも真実であり、被告山崎は、原告の違法行為によって多くの者が被害を受けていることから、原告に対しその改善を求めるため、関係者に対し右事実を告知したものであって、それは正当な行為である。

(1) 原告は、その従業員であった衣川正弘、大内正之をして、説明会に訪れた顧客に対し、「売上は月四〇万円ないし六〇万円は確実である。仕事は一〇〇パーセント保証する。紹介したところが合わなかったらすぐに次を紹介する。仕事が途切れることはない。多くの人がこの仕事で成功している。」などと申し向け、自動車売買契約等を締結させたが、実際には、顧客に対してなかなか仕事を紹介せず、仕事を紹介しても月間売上が四〇万円以上になるようなものではなかった。

(2) 原告は、実際には改造していない車両を改造車と偽って一七九万円で販売していた。これは、原告と同じ東洋グループに属し、密接な関係にあった東洋開発が、後部座席を取り外しただけの自動車を一七九万円で顧客に販売していた事実から明らかである。

(3) 原告が車両の販売代金の一部につきリベートバックを受けたという点については、被告山崎が、本一連の取引における資金の流れについて、原告と顧客との間の自動車売買契約上の代金相当額が信販会社からいったんスズキ自販東京に入り、そのうち軽自動車の真の代金相当額を控除した金額が原告に支払われているものと推測し、その趣旨で記載したものである。

(二) 被告山崎がスズキ自販東京、スズキ自動車の各取締役に対し別紙一の文書を、河北新報社に対し別紙三の文書を、それぞれ送付したことについては、これによってスズキ自販東京との間の車両売買取引が停止されたり、広告の掲載が打ち切られたりしたわけではなく、いずれも原告の主張する損害との間に何ら因果関係を有するものではない。

また、被告山崎が本件信販三社に対し別紙二の文書を送付したことについては、本件信販三社が右文書の送付によってローンの利用を拒否したことの証明はなく、原告の主張する損害との間に相当因果関係を認めることはできない。

さらに、被告山崎が本件公的施設の管理者に対し別紙四の文書を送付したことについては、原告は文書が送付されてからも北上市民会館、こずかた会館などの公的施設で説明会を開催しており、仮に公的施設の会議室を借用することが困難であったとしても、他の施設から会議室を借用することが可能であったから、従来のように説明会を開催することができず業務に支障を来したとはいえない。

(三) よって、被告山崎は、原告に対し、損害賠償義務を負うものではない。

2  被告軽貨急配が、原告に対して、不正競争行為ないし不法行為を理由とする損害賠償義務を負うか否か。

(原告の主張)

軽貨物運送協会は、組織としての実態はなく、被告軽貨急配の総務部長であった被告山崎が、被告軽貨急配の指示に従い、その勤務時間中に、その資金に基づいて活動していたものである。軽貨物運送協会の会員は設立当初から現在に至るまで被告軽貨急配ただ一社であり、その役員はすべて被告軽貨急配の従業員であって、その活動内容も、軽貨物運送業者に対する苦情を受け付けるものの、被告軽貨急配に対する苦情についてのみ解決を図り、それ以外の業者に対する苦情については事実の確認すらしないものであり、被告軽貨急配が自らの企業利益の防衛のために設置した単なる苦情処理の窓口にすぎない。したがって、被告山崎の前記の軽貨物運送協会名義による文書送付行為は、被告軽貨急配の業務執行行為にほかならない。

そうすると、被告軽貨急配は、被告山崎の前記不正競争行為ないし業務妨害行為(不法行為)について共謀したものであり、そうでないとしても、使用者責任が成立し、原告に対し、その損害を賠償する義務を負うというべきである。

(被告軽貨急配の主張)

被告山崎は、軽貨物運送協会を軽貨物運送業界におけるトラブル防止等の目的で設立したものであり、すべて独自の判断でその活動を行っており、被告軽貨急配の関係者に相談をしたり、同関係者から指示を受けたことは一切はない。したがって、被告軽貨急配に被告山崎との共謀や使用者責任は成立しない。

3  原告に生じた損害の額

(原告の主張)

平成八年九月から同年一〇月にかけて、原告に対し、ローンを利用しての車両の購入申込みが四四件あったが、被告山崎の前記不正競争行為ないし業務妨害行為により、本件信販三社が原告に対してするローン実行をすべて停止したため、自動車販売契約及び運送情報仲介基本契約を締結できず、その結果、車両四四台分の販売利益二七五二万〇八五六円と四四件分の仲介手数料七七〇万円(一件当たり一七万五〇〇〇円)の合計額に相当する三五二二万〇八五六円の損害が生じた。

(被告らの主張)

原告は、ローンを利用しての車両の購入申込みが四四件あったのに、被告山崎の前記不正競争行為ないし業務妨害行為によって自動車販売契約及び運送情報仲介基本契約を締結できなかったことから、車両四四台分の販売利益及び四四件分の仲介手数料が損害額である旨を主張するが、四四件の申込みのすべてが真に購入意思のあるもので、当初からローンの利用が可能なものであったと断定することはできない。また、車両一台当たりの販売利益は、広告費、人件費その他の諸経費の明細が不明である以上、これを算定することは不可能であり、契約一件当たりの仲介手数料も、原告提出の総勘定元帳(甲第一八号証)に基づいて算出すると三万円余りにすぎず、原告の主張は失当である。

第三  争点に対する判断

一  原告は、本件信販三社に対し別紙二の文書が送付されたことによってローンを利用した車両の販売ができなくなり、また、本件公的施設の管理者に対し別紙四の文書が送付されたことによって説明会の開催ができなくなり、業務に支障を来した旨を主張する。

しかし、他方、被告山崎がスズキ自販東京及びスズキ自動車の各取締役に対し別紙一の文書を、河北新報社に対し別紙三の文書をそれぞれ送付したことについては、原告自身、これによって車両の販売や説明会の開催ができなくなった旨を主張するものではなく、また、これによって原告とスズキ自販東京との間の車両売買取引が停止されたり、広告の掲載が打ち切られたりして、原告の業務に支障を来したという事実を認めるに足りる証拠もない。そうすると、被告山崎がスズキ自販東京及びスズキ自動車の各取締役に対し別紙一の文書を、河北新報社に対し別紙三の文書をそれぞれ送付したことについては、これに基づいて原告に損害が発生したものとはいえないから、業務妨害行為に該当せず、また、不正競争防止法に基づいて損害賠償を請求することもできないというべきである。

そこで、以下、被告山﨑が本件信販三社に対し別紙二の文書を、本件公的施設の管理者に対し別紙四の文書をそれぞれ送付したことについて、判断する。

二  甲第二号証の三及び四、第一〇号証の一及び二、第一一号証、第一五号証、第一九号証、第七三号証ないし第七六号証、第七七号証の一及び二、第七八号証ないし第九三号証、第九五号証、第九六号証、第九八号証、第九九号証、第一〇一号証、乙第三号証、第四号証の一ないし一四、第五号証の一ないし七、第六号証の一ないし一四、一六、一七及び一九、第七号証の一ないし八、第八号証、第一〇号証ないし第一八号証、第二一号証、第二二号証、第二四号証、第三九号証、第四三号証、証人長谷川富彦の証言、原告代表者及び被告山﨑各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

1  木村政彦(以下「木村」という。)は、平成八年六月二八日、原告が河北新報に「開業資金ゼロにて開業OK」、「仕事は一〇〇%保証」、「現況売上例四〇万~六〇万円以上」などと記して掲載した「軽貨物運送業独立開業説明会」の広告を見て、原告の仙台支店を訪れた。そして、原告の従業員である大内正之(以下「大内」という。)から、「売上は月四〇万円ないし五〇万円で、仕事は一〇〇パーセント保証する。配送の場所は石巻管内であり、仙台方面はない。仕事が増えてくれば車を二、三台にして有限会社にすることも可能である。仕事はたくさんあり、遅くとも八月一日より開始できる。佐川急便等の大手と取引をしているので、佐川急便が倒産しない限り我が社も倒産しない。仕事が途切れることはない。月平均売上の〇・五か月分の仲介料を支払ってもらう。自動車はローンが使えるから、資金がなくても大丈夫である。多くの人がこの仕事で成功している。」などという説明を受けた。

木村は、大内の右説明から、原告から自動車を買い受ければ、原告から運送業の仕事の紹介を数多く受けられ、月間四〇万円以上の売上を得られるものと信じ、これを前提として、同年七月二日、「自動車売買契約書」、「貨物軽自動車運送開業指導養成契約書」に署名押印し、原告との間で代金一七九万円で自動車を購入する旨の契約を締結するとともに、株式会 社ジャックス(以下「ジャックス」という。)との間でオートローン契約を締結した。その際、右の「貨物軽自動車運送開業指導養成契約書」の条項について読み聞かされたものの、聞き流したため、右契約の内容については十分理解することはなかった。その後、同年八月二八日、スズキ自販宮城から自動車が納入された。

ところが、原告は、木村に対しなかなか仕事を紹介せず、木村は、同年九月一一日ころ、原告の従業員である本多義行(以下「本多」という。)から仕事先の紹介を受けた。その仕事は、月間売上が三五万円になるという話であった。木村は、同月二八日、仕事の紹介先である石巻運送を訪ねたが、その社長から、「月三五万円も支払えない。そんなに支払うのなら社員でやる。二〇万円が限度である。軽自動車の仕事はない。」などと言われ、仕事の依頼を断られた。木村は、本多に対し、「話が違う。」と文句を述べたが、本多は、「今は軽自動車の仕事はない。」などと述べた。

原告は、その後も平成九年三月二四日に解散するまでの間、木村に対し仕事を紹介することはなかった。

2  大場敏一(以下「大場」という。)は、平成八年七月ころ、原告が河北新報に掲載した前記「軽貨物運送業独立開業説明会」の広告を見て、同月八日及び一五日に塩釜商工会議所で開催された説明会に参加した。そして、右説明会場において、原告の従業員である衣川正弘(以下「衣川」という。)から、「売上は月四〇万円ないし六〇万円は確実であり、仕事の提供は一〇〇パーセント保証する。紹介した仕事が合わなかったときは他の仕事を紹介する。チャータールートの仕事はたくさんあるので、営業担当者が紹介する何社かの中から選んでそこと契約してください。ルートの仕事をしながら土日等にスポットの仕事もある。当社は、コクヨ、佐川急便等の大手と取引をしている。ロイヤリティはないが、月平均売上の〇・五か月分の仲介料を払ってもらう。自動車はローンが使えるから、資金がなくても大丈夫である。多くの人がこの仕事で成功している。」などという説明を受けた。また、その際、衣川に対し、他に仕事を持っているので宅配便の仕事はできない旨を重ねて伝えたところ、衣川から、ルート配送便の仕事を紹介するので、宅配の仕事はしなくてよい旨の返答を受けた。

大場は、衣川の右説明から、原告から自動車を買い受ければ、原告からルート配送便の仕事の紹介を数多く受けられ、月間四〇万円以上の売上を得られるものと信じ、これを前提として、同年八月上旬ころ、「自動車売買契約書」、「貨物軽自動車運送開業指導養成契約書」に署名押印し、原告との間で代金一七九万円で自動車を購入する旨の契約を締結するとともに、ジャックスとの間でオートローン契約を締結した。その際、原告から右契約の内容についての詳しい説明は一切なかった。その後、同年九月一一日、スズキ自販宮城から自動車が納入された。

ところが、原告は、大場に対して、なかなか仕事の紹介をしなかった。大場は、原告に対し幾度となく催促をし、同年一〇月二日、ようやく本多と面談して仕事先の紹介を受けたが、その内容は、ルート配送便ではなく、宅配便であった。大場は、本多に対し、「話が違う。」と文句を述べたが、本多は、大場に対し、「当社は宅配の仕事しかない。せっかく車を買ったのだから、とりあえず会ってみてください。」と述べ、紹介先の運送会社を訪ねるように促すとともに、「運送情報仲介基本契約書」に署名押印することを求めた。大場は、やむなくこれに応じたが、結局、仕事内容が当初の話と違うとして、原告から紹介された仕事を受けることなく、原告に対し、仲介料三万四五〇〇円を支払った。

原告は、その後も解散するまでの間、大場に対し仕事を紹介することはなかった。

3  原告は、平成八年六月から同年一〇月までの間に、合計八六名の顧客との間で「貨物軽自動車運送開業指導養成契約」等を締結したが、その当時、原告が顧客に対して仕事を紹介できる運送業者は、二〇社くらいにすぎなかった。そして、右顧客の中には、木村及び大場のほかにも、同人らと同様、原告から運送業の仕事の紹介を数多く受けられ、月間四〇万円以上の売上を得られる旨の説明を受けて車両を購入しながら、実際には仕事の紹介を十分に受けられない者があった。

4  原告は、顧客に対し、スズキ自動車製の軽トラック「キャリイ・キャブ・シャーシー」ベース車とし、これにテント架装等を施した車両を代金一七九万円で販売していたが、その内訳については、「新車販売価格表」を配布し、車両本体価格が一二八万円、新規登録代行費用、取得税、車両回送費用等の諸費用合計が三四万七一一六円、ボディ特装テント、テント架装用幌棒セット等の車両付属品合計が一一万五〇〇〇円、消費税が四万七八八四円であるなどと説明していた。

原告が顧客に販売した車両のベース車の本体価格は、五六万五〇〇〇円であり、原告が車両を一台販売するについて実際に支出する金額は、右ベース車の本体価格のほか、自賠責保険料、任意保険料、リア・カンノン式ボディ取付費用、運送費用、営業用ナンバー取得費用など、合計で約一一七万円であった。

なお、スズキ自販東京は、原告が顧客に対して販売した車両と同じものをベース車としたパネルバンを、本体価格八〇万円余りで販売していた。

5  被告山﨑は、平成七年三月ころから「軽貨物運送協会」の名称で軽貨物運送業者に対する苦情等を電話で受け付ける活動をしていたところ、平成八年六月、原告と同じような業務を営んでいた東洋開発が顧客に対し、後部座席を取り外しただけで何ら特別な改造を施していない軽ワンボックスカーを改造車であるとして百十数万円で販売していた旨、東洋開発が仕事を提供してくれず、ローンの支払にも困っている旨の苦情を受けた。また、同年八月にも東洋開発に対する苦情を受け、同年一〇月に入ってからも、東洋開発及び原告が仕事を思うように提供してくれない旨の苦情をいくつか受けた。

被告山﨑は、平成八年六月及び同年八月に受けた右苦情等の内容に加え、同年七月当時、原告の代表取締役が東洋開発の取締役を、東洋開発の代表取締役が原告の取締役をそれぞれ兼務していたこと、東洋開発の本店所在地と原告の東京本社の所在地が同一であったことなどから、原告が東洋開発と一体となって「東洋グループ」なるものを形成し、東洋開発と共に、軽貨物運送業の独立開業希望者に対し、原告と契約を結べば原告から数多くの仕事の紹介を受けられ、高収入が得られる旨の虚偽の説明をした上、軽トラックを市場価格よりも不当に高額な価格で販売しているものと考えた。そして、軽貨物運送業界自体の信用性の喪失を危惧し、同月上旬ころ、本件信販三社や本件公的施設の管理者に対し、ローン契約の締結の中止や会議室の貸出の自粛を求めるべく、別紙二及び四の文書を作成し、これを本件信販三社及び本件公的施設の管理者に対して送付した。

6  被告山﨑は、平成八年一〇月二六日及び同月二七日、軽貨物運送協会を主催者名義とする「軽貨物運送経営相談会」を、同月二〇日ころに参加者募集の広告を新聞に掲載した上で開催し、また、同年一二月にも同様の相談会を開催して、右相談会に参加した木村及び大場らから、前記のような原告との間の契約を巡る一連の事実経過について聴取した。

木村及び大場は、平成九年四月、軽貨物運送協会から紹介を受けた弁護士に委任して、原告に対し、支払った仲介料等について、自動車売買契約及び運送情報仲介契約の無効ないし取消を理由とする不当利得の返還を求める旨の訴えを提起した。

三1  右二認定の事実を総合すれば、原告は、軽貨物運送業の独立開業希望者に対して、仕事先を紹介して高収入を上げさせる意思も能力もないのに、原告と契約を結べば原告から数多くの仕事の紹介を受けられ、高収入が得られる旨の虚偽の説明をした上、軽トラックを市場価格よりも不当に高額な価格で販売したものといわざるを得ない。そうすると、別紙二及び四の文書の送付によって告知された事実は、真実であると認められ、被告山﨑が本件信販三社に対し別紙二の文書を、本件公的施設の管理者に対し別紙四の文書をそれぞれ送付したことをもって、不正競争防止法二条一項一一号所定の不正競争行為ということはできない。

また、前記のような被告山﨑における当該文書送付の意図や文書送付に至る経緯、殊に実際に原告から説明を受けて車両を購入したものの説明どおりの仕事の紹介を受けられず、原告の対応に対して不満を持つ者が複数存在したこと(現に、それらの者のうちの何名かが、その後に原告を相手方として訴訟を提起している。)などの前記認定の諸事情に照らせば、被告山﨑が別紙二及び四の文書を送付した行為は、当時既に発生しその後も発生することが予想された、原告による顧客募集及び車両販売活動に起因する被害ないしトラブルを未然に防止することを企図したものと認めることができるから、これをもって違法な業務妨害行為ということもできない。

2  なお、甲第一〇一号証、第一〇二号証、原告代表者及び被告山﨑各本人尋問の結果によれば、被告山﨑は、被告軽貨急配の従業員としての勤務時間中に、被告軽貨急配の資金に基づいて「軽貨物運送協会」の名称で活動していたこと、被告軽貨急配の他の従業員も右活動に携わっていたこと、その活動内容は、軽貨物運送業者に対する苦情を受け付けるものの、被告軽貨急配に対する苦情についてのみ積極的に解決を図るものであり、それ以外の業者に対する苦情については必ずしも関心を払うようなものではなかったことが認められ、これらの事実に照らせば、「軽貨物運送協会」の活動が被告軽貨急配の利益を図る側面を有していたことは否定できない。しかし、この点を考慮したとしても、前記二認定の事実経過に照らせば、被告山﨑の右行為について前記のように判断することを、妨げるものではない。

四  以上によれば、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(口頭弁論の終結の日 平成一〇年一二月一七日)

(裁判長裁判官 三村量一 裁判官 長谷川浩二 裁判官 中吉徹郎)

(別紙一)

株式会社スズキ自販東京取締役仕長様

役員一同様

営業用軽トラック提携販売自粛のお願い

当協会は軽貨物運送業者の健全経営を目的に活動している非営利団体です。貴社東京特販部が行うオートローン貸与による(株)東洋コーポレーション(東洋開発)との提携事業の自粛を御願い申し上げるものです。以下に現状の問題点を列記いたします。

問題点 1. 詐欺共同行為

(株)東洋コーポレーション(東洋開発)は本社を東京都豊島区千早町1-15-17富士ビル7Fで代表者は設立以来変更が相次いでいる様ですが現在、北見幸之助となっております。

(株)東洋コーポレーション(東洋開発)の手口は公的施設を利用し新聞又は折込チラシにて「軽貨物運送独立開業者募集」「売上40万~60万以上」「独立開業資金O」「仕事は100%保証」と勧誘。それを信じた独立開業希望者に売上を上げる意思も能力も無いのに、いつわってスズキキャリー軽トラックを(市価70万~85万円)を改造車といつわって市価の2倍以上の価格179万円にて販売暴利をむさぶるものです。

問題点 2. 貴社スズキ自販東京特販部の関与の問題

問題点 1. で指摘した通りの事業内容に貴社特販部が販売者となって(株)東洋コーポレーションと共同で70万~80万円の車輌を179万円で販売している。又販売代金の内(株)東洋コーポレーション受け取り分をリベートバックしていると思われる点。(推定)

オートローン使用にあたって自動車代金以外すなわち役務付(仕事提供条件付)販売にあたり売買契約そのものが無効のおそれ又オートローン会社への抗弁権の接続の発生があると思われます。

問題点 3. 社会正義への問題(公序良俗違反)

前述する如く(株)東洋コーポレーションの行為は同社代表者の指示による会社ぐるみの詐欺行為であることは明らかであり、貴社がオートローンを貴社名で利用させるのは違法行為を助長するものであり独立開業被害者に(株)東洋コーポレーション(東洋開発)と連帯して民法第719条に基づき損害賠償の責任を負う必要があるものと思われる。

上記の理由により(株)スズキ自販東京様にあられましてはスズキキャリートラック販売に関し共同販売(オートローン利用)を中止していただきたい。

尚、現金にて個別開業者又は(株)東洋コーポレーションに販売をさまたげるものではありません。

以上社長様にあられましては御吟味いただき社会正義の為、弱者保護の為よろしくお取り計らいください。

軽貨物運送協会

東京都葛飾区亀有5-33-8下山ビル3F

TEL 03-5616-5930

(別紙二)

国内信販株式会社

本社 加盟店管理部 御中

株式会社スズキ自販東京 特販部を加盟店とするオートローン申込みに関し、申込者多数から被害が発生、当協会に多数の相談が有り、一部訴訟の提出への動きに対し、以下の通りご連絡申し上げます。

現在迄の資科では御社加盟店(株)スズキ自販東京、スズキ自販宮城は本社東京都豊島区千早1-15-17富士ビル7F 東洋コーポレーション 代表北見幸之助 住所同一(株)東洋開発 代表 不明 又東京都渋谷区神宮前1-16パレフランス524 (有)新開システム 代表 不明と連帶し、仕事の提供を餌に通常価格78万円の軽トラックを179万円で販売しており、詐欺紛い行為と思われます。

加害者(株)スズキ自販東京(株)東洋コーポレーションは実際には、被害者らに約する様な収入を上げるだけの充分な意思も能力も有していないにもかかわらず、運送事業者養成契約を結べば東洋コーポレーションから良い仕事を数多く紹介してもらえる。又これにより高収入が得られる旨の説明をなして被害者らを欺き、市場価格に比べて高額な価格で車輛を購入させるものです。

上記の理由から違法な詐欺行為と思われます。

又スズキ自販東京が加盟する各クレジット会社は(株)東洋コーポレーション(株)東洋開発が前途の如き違法な営業を行っていることを知りながら、加害者加担会社(株)スズキ自販東京と加盟店契約を継続し続ける事は違法行為を助長するとおもわれます。上記の理由から軽貨物運送開業詐欺に加担するクレジット契約を中止して戴きたくお頃い申し上げます。

問題点

河北新報紙面開業募集社名は東洋コーポレーセョンであったが、コピー同封の通り(有)新開システム 代表仙波 健一と開業に関する契約を結ばされた。

東洋コーポレーションからは自動車のみを押し売りされ、現在仕事が無く されたと思い相談をした、河北新報社は東洋コーポレーションが広告にある40万~60万売上が上がる旨の広告の確認を取らず広告している。私は河北新報を信じて開業しただけに当感している。

現在訴訟の準備中ですので名前は伏せさせて下さい。

軽貨物運送協会

東京都葛飾区亀有5-33-8 下山ビル3F

TEL 03-5616-5930

(別紙三)

広告掲載 自粛のお願い

東洋コーポレーションによる運送開業商法被害者よりの要 について中し上げます。

東洋コーポレーションは本社が東京都豊島区千早1-15-17 富士ビル7階であります。

加害者東洋コーポレーションの営業手法、被害者が東洋コーポレーションから軽貨物自動車を購入した経緯については次の通りである。

加害者東洋コーポレーションは頻繁に河北新報紙面にて求人募集広告を掲載していました。その内容は見本紙の通りおおむね「40万~60万以上の売上可能」「独立開業資金Oにて開業OK」「仕事は100%OK」等というものであった。

被害者はいずれも上記広告見本内容を読み面接を受ける為、加害者東洋コーポレーションの説明会場を訪れた。

上記面接の際被害者逮は加害者東洋コーポレーションの従業員から加害者 東洋コーポレーションと契約を結び軽自動車を購入すれば、加害者東洋コーポレーションから報酬の良い仕事を紹介するから、軽貨物運送業を独立開業でき高額の収入を得る事ができる旨説明をうけた。

被害者は上記説明通り車を購入して独立開業すれば、広告された様な収入が保証されると信じ、加害者東洋コーポレーションから市場価格に比べ不当に高額な価格で不必要な備品と共に軽貨物自動車を購入した。

被害者違は稼働し始めたが、加害者東洋コーポレーションの紹介する仕事は単価が安い上に仕事も十分でなく、加害者東洋コーポレーションが被害者違に説明又新聞広告した様な高額の収入を上げる見込は到底無い事が判明した。

被害者売上例は月3万・6万・8万等で生活が成り立たない等の相談が続発している事に鑑み、当協会は被害者救済の指導・アドバイスを行っています。

貴社におかれましても広告依頼主東洋コーポレーションを充分調査の上、広告掲載の自粛を求めるものです。

軽貨物運送協会

東京都葛飾区亀有5-33-8 下山ビル3F

TEL 03-5616-5930

(別紙四)

会議室貸出自粛のお願い

貴会議室利用による運送開業被害者よりの相談例に基づき会議室貸山自粛のお願い。当協会は軽貨物運送者の健全経営を目的に活動している非宮利団体ですが、先般より軽貨物運送開業者経営相談を実施した結果、東洋コーポレーションにて開業した軽運送者より相談が多数ありました。

貴会議室利用チラシ案内にて40万~60万円確実に かるとの話で、不必要な軽貨物車(不当に高い)売りつけられ信じて開業したが、売上が5万~6万とあがらず生生活に困難を窮めている。

公共的施設での説明であったので信じたと訴えて来ております。

当協会で調査したところ東洋コーポレーションは、本社を豊島区千早町1-15-17 富士ビル7階で、平成7年1月~2月より首都圏各地又東北地区で詐欺紛い商法を展開している様です。

手口は公的施設を利用、新聞折り込みチラシにて「売上40万~60万確保」「独立開業資金OにてOK」「仕事は100%確保」と勧誘、それを信じた独立開業希望者に売上を上げる意思も能力も無いのに、偽って車を(市場価格より高い)オートローン又は現金にて売りつけ暴利をむさぶるものです。

現在加害者(株)東洋開発グループ東洋コーポレーションの商法で被害を受けた、軽貨物業社は(株)東洋開発グループ被害者の会を結成、集団訴訟の準備を行っております。

上記の理由により貴会議室にあられましては(株)東洋開発グループ東洋コーポレーションに対し会議室の貸出を自粛して戴きたくお願い中し上げます。

軽貨物運送協会

東京都葛飾区亀有5-33-8下山ビル3F

TEL 03-5616-5930

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